リスクテイカー論② リスクの正体
前記事は下記より。
前回は2019年の8月24日に書いていたので10ヶ月ぶりの続編となる。自分自身が次のステップに進むまでに10ヶ月かかったといっても差し支えないと思う。
前記事では、その論旨として「リスクを受け入れる(リスクテイカーになる)とは、「ロスカットになった場合にその損失を完全に受け入れて、動じることなく1つの現象として捉えること」だけではなくて、エントリした時から生じる値動きの内、エントリポイントから逆行する部分についてをある程度想定できていることが前提にあると思う。」といったテーマで書いていた。
今回はそこから1歩進み、あるいは原点に立ち返る。
>>エントリした時から生じる値動きの内、エントリポイントから逆行する部分についてをある程度想定できていることが前提にある。
この次がなければいけない。つまり、利益を伸ばす過程に生まれる切り返しの動きを観測した時、そこにあるリスクを正しく認識しているのかということだ。
トレードする時、そこに存在する値動きの中で何を恐れているのかを自分は知っているのか。そしてそのリスクを正しく受け入れているのか。
損切りを恐れないリスクテイカーは、その次に含み益の増減を恐れないリスクテイカーになる必要があると考える。
下記はユロ円のショートをした結果の画像で、三尊抜けのリテスト付近から青切り上げラインを一度下抜けしたあとに、ライン内へ復帰したあたりで決済したものだ。
一見すると大きく取れたトレードなのだが、ここには自分の中である恐怖があった。
元々の決済予定は赤水平線から水色切下げラインの間くらいで考えていた。三尊からの3波が青切り上げライン1本目を下抜けして、そのままいけるかと思われたが緑四角枠で反発してするするとライン内に復帰してしまった。その後この戻りを4波として5波動目の下落があった。この先は現時点では分からない。
青切り上げラインを下抜けた時に考えていたことは、このまま予定箇所まで一気に落ちていくか、あるいはリテストが入るかもしれないということだった。リテストが入れば5波動目に戻り売りで増し玉できるかもしれないとさえ考えていた。だから四角枠で反発した時は何も恐れていなかった。この時エントリポイントから安値まで330pipsほどの利益が乗っていたのだった。
ここから決済した箇所まで80pipsほどの逆行。この間、次第に萎んでいく含み益をまじまじと眺めては、チャートの値動きを見つめていた。そして次第に怖くなっていった。
どこまで戻るのか、本当に青切り上げラインや紫MAのあたりで戻り売りとなって5波動目が出るのか。もしかしたら大反発となって黒チャネルを上抜けしやしないか。
明らかにリテストが入る可能性を考慮していたし、5波動目に乗るつもりでもいた。結果的に戻り売りの値動きは成立したというのに、自分にはそれができなかった。なぜか?
自分が何を恐れているのかを、よく分かっていなかったからだ。
【リスクの正体】
リスクとはなんであろうか。Wikipediaに曰く「将来のいずれかの時において何か悪い事象が起こる可能性」とある。
リスクとは単に危険を指すのではなく、悪いことが起こる可能性を指している。トレードにおけるリスクについては、前記事とこの記事の冒頭でも書いた通りだ。
そこに照らし合わせると今回のトレードにおけるリスクはなんであろうか。
①どこまで戻るのか
②本当に青切り上げラインや紫MAのあたりで戻り売りとなって5波動目が出るのか
③もしかしたら大反発となって黒チャネルを上抜けしやしないか
どれも起こりうる悪い予想に基づく恐怖であることに変わりない。しかしここでトレード上のリスクと言えるものは③しかない。黒チャネルを上抜けすることは、下降トレンドの転換リスクが何倍にも高まる動きだ。それでもしこの黒チャネル上抜けが戻り高値を捉えようものなら絶句してしまうだろう。一体どれだけの利益をみすみす逃したのかと、そしてここから起こりうる最悪の事態を想定して。
端的に言って①と②はトレード上の値動きに翻弄される心の動揺でしかない。
①どこまで戻るのか
→未来のことはわからない。当然のことだ。
②本当に青切り上げラインや紫MAのあたりで戻り売りとなって5波動目が出るのか
→未来のことはわからない。だからその可能性に賭ける。それだけの話だ。
そこに明らかにある異質な恐怖をカテゴライズできず、トレーダーとして恐れるべきリスクが1つしかないことに気づかず、たくさんあるかのように見えた恐怖に飲まれてしまった。それがこの値動きによって自分の身に起きたことだった。
リスクテイカーとは、そこにある恐怖の正体を正しくカテゴライズし、自分が恐れるべきリスクを完全に把握し、それを甘受することだと考える。甘受できたならば、自分は迷いもなく戻り売りの機会に増し玉を建てたであろうと思う。
また、戻り高値を超えない限りトレンドは崩れないと信じたとしても、一度は膨らんだ含み益が減っていく様を眺めていることも利益を逃し続けているという恐怖になる。
例えば青切り上げラインで反発して5波が始まればいいのだとか、そこを上抜けても上位のMAで反発すればいいのだとか、あるいは黒チャネル上限で反発すれば大丈夫だといいわけを重ねていくことは完全に誤りだ。
それはトレードのリスクを認識する行為ではない。トレーダーは利益をとっていくことが命題なのだ。そこに照らしてみれば、利益を減らす愚行は明らかに間違っていると言える。
順調に利益が乗っている時、チャート上の戻り高値・押し安値までの逆行を受け入れることはトレード上のリスクの甘受ではない。
それは、その逆行があらかじめ想定できているケースを除けば、完全にトレーダーとしての敗北だ。逆行し始めてからここまで、ここまでならとゴールポストを動かしていけない。自分の場合、青切り上げラインと1Hの紫MAの交錯付近がゴールポストだった。ここを上抜けてしまったので決済した。以前ならもう一つ上のMAまでとか黒チャネル上限までとか、ゴールポストを動かし続けたに違いない。
結果的に黒チャネルを上抜けしていないので、もしそうしていても利益は大きく取れただろうが、それではいけないと考える。一定のルールのもとで確固とした判断基準のもとでトレードしなければいけないと考えるからだ。
その逆行が想定外だった時、トレードの技術とマインドにおいて、逆行による含み益減少はトレードの目的が最大利益確保を命題とするならば、それを眺めることはそれはトレード上のリスクの甘受ではなく、トレード上の過ちということになる。
その過ちをリスクの甘受と混同してしまうことは決済判断を間違うことに繋がる。何が何でも阻止したいことだ。
精神論というかマインドについての話は以上となる。ここからは技術論。拙いのだけど自分なら自分が持ちうる尺度によって決済を緑四角枠で決めることも可能であった。
フィボナッチにて観測すると61.8%ラインまで38.2%分のリテストとなっており、その反対側の138.2%ラインで反応している。また下記の画像のように、大きくみれば青四角枠で囲ったオレンジ切下げラインが存在している。
従って、①フィボナッチライン②オレンジ切下げラインリテストポイント③MAタッチポイントと3つの決済根拠が交錯している箇所だった。これだけ揃えばここで決済するという判断は間違いなく正しいと言える。
結局の所、全てはチャートに内包されているのだ。それを観測する側によって問題は引き起こされる。それはマインドであったり、技術であったり。まかり間違ってもチャートが悪いとは考えられない。いつでもチャートは正しい。何よりも誰よりも正しい。我々はただの観測者であり、その中で自分の定めたルールに則って売買しているだけなのだ。
リスクテイカーとはどんなものなのか、自分の中でまた1つ次のステップに進むことができたと思う。